人形アニメーション 夜話

人形アニメを動画で紹介

アダム・エリオット

Adam Elliot(1972~ )

オーストラリア出身のアニメーション作家。デザイナーの仕事を経て大学でアニメーションについて学びました。独特の苦い物語が作風で、彼自身は自作のアニメーション作品をクレヨグラフィー(Clayography)と呼んでいます。多数の賞を受賞しており、米国アカデミー賞の短編アニメーション部門でも受賞しています。


『Uncle』 1996年

www.youtube.com

 

 

『Harvie Krumpet』 2003年

www.youtube.com


『Mary and Max』 2009年
オーストラリアに住む少女メアリーは、偶然からアメリカに住む人物マックスと文通を始めることになる。マックスは精神病を抱えており孤独で恵まれない人生だったが文通が彼の心の支えとなる。しかしメアリーの言葉や行動からマックスは動揺し精神の健康を害することにもなる。

www.youtube.com

監督が自作をクレヨグラフィー(クレイアニメーションで描かれた伝記)と呼ぶのがよく分かる。少女と精神病者の中年男との出会いから、彼女が結婚し子を持つまでという人生の短くない期間のそれぞれの人生を描くという物語になっている。
双方とも幸運と幸福がないわけではないが、総じて不幸な暮らしぶりで、互いに手紙をやりとりすることでそれが励みになるものの、意図せず相手を困らせたり、それによって怒りをぶつけたりと望まない展開にもなる。世の下層にいる人たちが寄り添っていても軋轢や衝突はあって、人と人との関係が難しいことを描いている。

大人向きの人形アニメーションというのは多々あるが、やはりアニメーションを使った芸術的な表現の作品であることが多く、物語は抽象的であったりするけれど、この作品は分かり易いと言っても良いくらいの具体的な物語が展開されていて、その物語に感動する。
実写映画でも作れないお話ではないだろうが、人形が演技をすることで、辛い物語をただ深刻なだけでなくコミカルに表現している。
色調にも工夫が施されていて、マックスの住むニューヨークはモノクロで描かれるが、メアリーから彼に送られた物だけが鮮やかな色を持っている。マックスの灰色の生活にあって彼女の手紙と贈り物が如何に喜ばしいものかが表現されている。

大人向きの苦いけれど感動的な人形アニメーションであり、他にはなかなかない味わいのある作品になっている。

 

参照

国宝級なり! アダム・エリオット プロフィール、フィルムグラフィー、作風・スタイル!: 海から始まる!?

アダム・エリオット スペシャル「クレイオグラフィーの秘密」&長編作品「メアリー&マックス」 | 新千歳空港国際アニメーション映画祭2015

『メアリー&マックス』アダム・エリオット監督について - THE KAWASAKI CHAINSAW MASSACRE

Adam Elliot - Wikipedia

Clayography - Wikipedia

Harvie Krumpet - Wikipedia