人形アニメーション 夜話

人形アニメを動画で紹介

レオン&コシーニャ

クリストバル・レオン/Cristóbal León
1980年、チリ・サンディアゴ生まれ

ホアキン・コシーニャ/Joaquín Cociña
1980年、チリ・コンセプシオン生まれ

共にチリ・カトリック大学を卒業、レオンはベルリン芸術大学アムステルダムのDe Ateliersでも学んだ。2007年から活動をはじめたビジュアルアーティスト。映像作家のナイルズ・アタラーと映像制作会社Diluvioを設立している。

 

『LUCIA』2007年
ナイルズ・アタラーと共同監督

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『LUIS』2008年
ナイルズ・アタラーと共同監督

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『The Smile - Thin Thing (Official Video)』2022年
レディオヘッドトム・ヨークの新バンド、The Smileのミュージック・ビデオ。レオン&コシーニャ監督。制作はDiluvio。

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『オオカミの家』2018年
レオン&コーシーニャ監督作
集落で暮らしていたマリアは子豚を逃してしまいその罰を受けたことが苦痛で集落を逃げ出してしまう。ある家にたどり着くとそこには豚が二匹いた。豚たちにペドロとアナという名前をつけて世話をしたが、森からはマリアを追うオオカミの声が聞こえてくる。

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チリに実在したカルト教団のコミューン「コロニア・ディグニダ」をモデルとしているという。この教団は、ドイツ人のパウルシェーファーが設立したもので、教団内では強制労働や性的虐待があったことが知られており、そして軍政であったピノチェト政権に反対する人々を監禁し拷問、殺害していた。教団から脱走すると捕まえられ酷い拷問と洗脳を受けた。
そのような暗い出来事をモデルとしていて、マリアはコロニア・ディグタグから逃走した子供、そしてオオカミは教団からの追手を描いている。

しかし、そのような背景が分からなくとも映像とアニメーションに酔うことはできる。人形アニメーションで使われる人形の殆どはミニチュアだけれど、この映画では等身大の人形が動き演技をする。その人形も精巧な作りとは言えず、粗い造形が不安を呼び起こさせる。そして人形だけでなく実物の部屋の壁にあらゆるイメージが描かれて、それがメタモルフォーゼする。観客はその異様なアニメーションを観ているだけで恐怖と不安を感じながら、次々と現れるイマジネーションに翻弄されることになる。

映画の中で背景となったコロニア・ディグタグのことは具体的に描かれていないから予備知識を得たり鑑賞後に解説を観なければ知り得ることはないだろう。しかし、それらの知識を持たずに鑑賞してもイメージの奔流を鑑賞することで驚きと面白さがある。
ヤン・シュワンクマイエルクエイ兄弟の系譜に繋がる、アニメーションによる真正のアート・フィルムだった。

同時上映では『骨』2021年が上映された。

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zaziefilms.com

 

参考

Cristóbal León y Joaquín Cociña - Wikipedia, la enciclopedia libre