人形アニメーション 夜話

人形アニメを動画で紹介

マルセル 靴をはいた小さな貝

2023年、米国、ディーン・フライシャー・キャンプ監督作

貝のマルセルは家主のいなくなった家に住んでいて、昔は仲間も家族もいたけれど、今はおばあちゃんと二人暮らしでした。ある日からその家にやってきたディーン(監督)と触れ合う内に、インターネットで家族を探していることを動画で発表すると、あっという間に人気者になってテレビ出演するまでになってしまいました。はたして家族は見つかるのか。

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現実に貝のマルセルがいるかのような疑似ドキュメンタリー(モキュメンタリー)の物語になっている。

主人公のマルセルは巻き貝に目玉がひとつと足が生えていて靴をはいているという姿。一見可愛いと思えない造形だけれど、家族のいなくなった無人の家でおばあちゃんと懸命に暮らしている姿や、祖母をいたわる態度、インターネットでバズっても有頂天になるようなこともない自制的な姿が健気で、その姿が次第に可愛く思えてくる。
人形は動き出すことで魂があるかのように見えるものだけれど、マルセルの健気さや可愛さに貢献しているのは声優の力も大きいだろう。

マルセルの声を担当しているのはコメディエンヌのジェニー・スレイト。彼女の声と喋り方がマルセルを愛らしいものにしている。

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大作映画のストップモーション・アニメーションと違って派手な場面はないが、モキュメンタリーという作りであるから実写との融合は丁寧に作られている。マルセルがディーンの自動車に同乗してドライブする場面や植木鉢を倒してしまう場面などにそのような工夫が見られる。

そしてマルセルと祖母のコニーおばあちゃんとの場面では愛らしいセットと灯りで小さく可愛い世界も見せてくれる。


実写との融合、モキュメンタリーという純粋なストップモーション・アニメーションではないけれど、マルセルのキャラクターに癒やされて、映画を見ている間にマルセルを応援したくなるような可愛く洒落た作品になっている。
監督はこの映画の功績が認められて、次はディズニーで『リロ&スティッチ』の実写版を撮るらしい。

https://marcel-movie.asmik-ace.co.jp/